アリスのお茶会
更新状況と雑記。そして優雅とは言えない日常の数々。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
BLEACH/日番谷夢 「彼が不在の三日間 参」の後日談です。
続きからご覧下さいませ。
続きからご覧下さいませ。
手をつないでくれるのも、わがままを聞いてくれるのも、とても不本意な理由からだと知っている。
だから、
嬉しいけれど、憎らしいのも本当のこと。
「この沈丁花、どうしたんだ?」
文机の上に置かれた一輪挿しに一枝の沈丁花を見つけて、日番谷がそう聞いた。
この邸の庭にも沈丁花はあるが、少女が今までその花枝を飾った事などない。
少女の脳裏に一昨日の夜の事が思い出された。
―――言っちゃいけないのは「冬獅郎と似てる」って事だから、これは言ってもいいの・・・かな?
「・・・貰った」
「―――その間はなんだ?」
一秒にも満たない逡巡であったのに、日番谷は不可解そうに問い返した。
どうしていつも気付かれるのだろう、と少女は不思議に思う。
少女のことで日番谷にわからない事などないのではないか、そう思う。
足りない言葉や態度を、きちんと見つけてくれる。
―――たったひとつの想いにだけ、気付かないのだけれど。
そんな思考に捕われていると、少年の溜息が落とされた。
「違うこと考えてるだろ」
「そう、かな?」
「そうだろ。もういいから、酔いが醒めてるなら風呂に入ってこい」
こくりと頷けば日番谷に髪を撫でられた。
―――ほら、やっぱり。子ども扱いする。
その優しさは、手のかかる妹に対するものだ。髪を撫でる手は大好きだから、何も言わないけれど。
風呂上がりに、入れ違いで風呂に入る日番谷から「ちゃんと髪を乾かせよ」と言われるのは、少女にとって日課のようなもの。
それに対して素直に頷く少女に、呆れた表情で「お前のそれは、あてにならねーんだよ」と少年が返すのも。
今日も今日とて。
「先に髪を乾かせよ」
後ろからかけられた日番谷の声に、生返事を返して読んでいた頁を捲った。
そうすれば、諦めた少年が溜息をつきながら、長い髪を乾かしてくれる事を少女は知っている。
はたして、頭を撫でるのと同じ優しい手つきで髪を乾かしてくれる日番谷に、本を読みながら口元が緩むのがわかった。
妹扱いされているのだと承知しているが、少年の手を独り占めできる貴重な機会を逃さない程度には、少女はしたたかではある。
そんな時、背後で盛大な溜息が吐かれた。
「幸せが逃げるよ」
「誰のせいだ」
あと少しで読み終わる本をぱたんと閉じる。
「私?」
「・・・別にお前のせいじゃない」
くるりと振り返って翡翠の瞳を見つめると、日番谷は眉を寄せて困ったような顔をした。
何故そんな表情を見せるのかがわからず、首を傾げる。
「もう寝るぞ」
日番谷が立ち上がったので、少女は慌てて読んでいた本を片付けた。
本を片付けた折にかすめた沈丁花の香りに、一瞬気をとられていると。
「一緒に寝るのは、今夜だけだからな」
「・・・・・・・・・」
「おい、返事は」
「うん。(しばらくは我慢するから)今夜だけ」
「―――なにか別の含みがなかったか?」
ふるふると首を振る。
そして日番谷の布団の端でちょこんと待つ。
「ほら、早く入れ」
滑り込んだ布団は、昨夜と同じように日番谷の香の匂いがする。
でも昨夜と違うのは、近くに大好きな温もりがあるからだ。
無意識に日番谷の胸もとに擦り寄ると、少年の溜息が聞こえた。
「また」
「・・・お前がいつまでも甘えただからだろ」
「直んないよ」
くすくすと笑っていると、日番谷の香が強くなった。
躊躇いがちに抱きしめる日番谷に応えるように、少女もその背に腕を回す。
まどろむ意識をさらに加速させるように、日番谷の規則正しい鼓動が眠りへと誘う。
眠りの淵に沈みながら、少女は思った。
―――少しくらいどきどきしてくれたっていいのに・・・。
日番谷の腕の中で安らかに眠る少女は、その後の事を知らない。
だから、
嬉しいけれど、憎らしいのも本当のこと。
「この沈丁花、どうしたんだ?」
文机の上に置かれた一輪挿しに一枝の沈丁花を見つけて、日番谷がそう聞いた。
この邸の庭にも沈丁花はあるが、少女が今までその花枝を飾った事などない。
少女の脳裏に一昨日の夜の事が思い出された。
―――言っちゃいけないのは「冬獅郎と似てる」って事だから、これは言ってもいいの・・・かな?
「・・・貰った」
「―――その間はなんだ?」
一秒にも満たない逡巡であったのに、日番谷は不可解そうに問い返した。
どうしていつも気付かれるのだろう、と少女は不思議に思う。
少女のことで日番谷にわからない事などないのではないか、そう思う。
足りない言葉や態度を、きちんと見つけてくれる。
―――たったひとつの想いにだけ、気付かないのだけれど。
そんな思考に捕われていると、少年の溜息が落とされた。
「違うこと考えてるだろ」
「そう、かな?」
「そうだろ。もういいから、酔いが醒めてるなら風呂に入ってこい」
こくりと頷けば日番谷に髪を撫でられた。
―――ほら、やっぱり。子ども扱いする。
その優しさは、手のかかる妹に対するものだ。髪を撫でる手は大好きだから、何も言わないけれど。
風呂上がりに、入れ違いで風呂に入る日番谷から「ちゃんと髪を乾かせよ」と言われるのは、少女にとって日課のようなもの。
それに対して素直に頷く少女に、呆れた表情で「お前のそれは、あてにならねーんだよ」と少年が返すのも。
今日も今日とて。
「先に髪を乾かせよ」
後ろからかけられた日番谷の声に、生返事を返して読んでいた頁を捲った。
そうすれば、諦めた少年が溜息をつきながら、長い髪を乾かしてくれる事を少女は知っている。
はたして、頭を撫でるのと同じ優しい手つきで髪を乾かしてくれる日番谷に、本を読みながら口元が緩むのがわかった。
妹扱いされているのだと承知しているが、少年の手を独り占めできる貴重な機会を逃さない程度には、少女はしたたかではある。
そんな時、背後で盛大な溜息が吐かれた。
「幸せが逃げるよ」
「誰のせいだ」
あと少しで読み終わる本をぱたんと閉じる。
「私?」
「・・・別にお前のせいじゃない」
くるりと振り返って翡翠の瞳を見つめると、日番谷は眉を寄せて困ったような顔をした。
何故そんな表情を見せるのかがわからず、首を傾げる。
「もう寝るぞ」
日番谷が立ち上がったので、少女は慌てて読んでいた本を片付けた。
本を片付けた折にかすめた沈丁花の香りに、一瞬気をとられていると。
「一緒に寝るのは、今夜だけだからな」
「・・・・・・・・・」
「おい、返事は」
「うん。(しばらくは我慢するから)今夜だけ」
「―――なにか別の含みがなかったか?」
ふるふると首を振る。
そして日番谷の布団の端でちょこんと待つ。
「ほら、早く入れ」
滑り込んだ布団は、昨夜と同じように日番谷の香の匂いがする。
でも昨夜と違うのは、近くに大好きな温もりがあるからだ。
無意識に日番谷の胸もとに擦り寄ると、少年の溜息が聞こえた。
「また」
「・・・お前がいつまでも甘えただからだろ」
「直んないよ」
くすくすと笑っていると、日番谷の香が強くなった。
躊躇いがちに抱きしめる日番谷に応えるように、少女もその背に腕を回す。
まどろむ意識をさらに加速させるように、日番谷の規則正しい鼓動が眠りへと誘う。
眠りの淵に沈みながら、少女は思った。
―――少しくらいどきどきしてくれたっていいのに・・・。
日番谷の腕の中で安らかに眠る少女は、その後の事を知らない。
PR